「実力テストも終わって、大体の部活動も3年生は引退して、夏休みと共に受験モードやな!」

「そうですか~?最近蒸し暑い日も多いし、ただただやる気が出ないだけなんですが」

「何を言うておる!部活動を引退したら受験モードになるというのは昔から決まっていてだな。だいたい自分は先輩の入試が終わった3月から『お前たちはもう受験生だぞ!』って言ってきたはずだが。」

「何となく聞こえていました」

「何となくね。」

「だって別に将来の夢が決まっているわけでもないし、絶対この高校に入って勉強したいとかも特にないし、この間の志望校調査でもなんて書けばいいのか困りました」

「将来やりたい事とか何か無いの?」

「ゲーム!」

「それは今やりたい事だろ!じゃあもう一つ。高校に行って勉強する気はあるの?」

「う~ん。でも先輩とかも皆高校に行っているし、親もせめて高校くらいは行っておきなさいって言うから。まあ、何となくですね」

「何となくね。(2回目)」

「そういう先生こそ中学3年の今頃ってどうだったんですか?受験モードになっていたんですか?」

「ももももちろん受験モードになっていたに決まってるじゃないか!しっかりと志望校を決めて、合格へ向けて日々勉強に励んでいたぞ!何を言っているのかね?」

「・・・嘘ですよね」

「うん。嘘。」

「やっぱり」

「先生や大人たちは『受験生だろ!勉強しろ!』って言うけど、実際この時期に受験モードに入っていた大人って多分1割もいないと思う。つまり自分はたいしてやってなかったのに子供たち=君らには『勉強しろ』って言ってるわけ。」

「ひどっ!言う事聞く気なくすわ!」

「ただ、大人たちも別に嫌がらせで『勉強しろ』って言ってるわけじゃない。」

「ほんと?」

「前にも話したと思うけど、受験勉強ってゴールは決まっているけれど(入試の日)スタートって決まってないんだよね。で、当然受験ギリギリになればみんな勉強するんだけど、『全然間に合わない!もっと早くから勉強しておけばよかった!』って後悔するわけ。テスト勉強でも似たような経験あるだろ?」

「あるあるですね」

「テストは別にいいけど(本当はよくないけど)入試ではそれで合否が決まる。やっぱり後悔も大きいわけさ。で、どんな後悔かっていうと『夏休みからもっと勉強しておけばよかった~』ってやつ。」

「あっ・・・」

「ただ大人ってのはメンツとかプライドとかいろいろあって、なかなか子供に自分の後悔とか失敗談を詳しく話さない・話せないものなのさ。」

「ふ~ん」

「だから、大人はただただ『勉強しなさい』って言ってくる。ただしそれは嫌がらせではなく、後悔をしてほしくないっていう想いがこもった『勉強しなさい』なわけだ。だから『勉強勉強うるさいなぁ』って思うかもしれないけど、その言葉に怒ったりせず、せめてスルーする位にしておこうな。」

「ん~。前向きに検討させていただきます」

「心配するな。塾でしっかり課題を出して、親に勉強しろって言われなくても勉強しなきゃならないような状況を作ってあげるから。」

「うわっ。鬼や!」

「はい、鬼です。」

「でも勉強しろって言う親の言う事を聞くんだから、こっちの言う事も聞いてもらわないと」

「何やその交換条件。てか『勉強しろ』っていうのも君らの為を思って言ってるんやが。でもまあちゃんと勉強頑張れば言う事聞いてくれるんじゃないか?」

「よっしゃ!毎日唐揚げとチャーハンや!」

「多分無理だと思う。」

「何でや!」

「親は君らの体調や健康も含めて応援してるからや。毎日唐揚げとチャーハンじゃ栄養バランスが偏るだろ。家庭科で習ったろ?第何群がなんとかで~とかバランスがなんとか~みたいなやつ。」

「あ~、もう勉強やる気出ないわ」

「おいっ!じゃあ卒業後の春休みに自分が行きたいところに旅行に行くってのはどうや?多分来年の春には新型コロナもワクチンが普及してかなり自由に行動出来るようになってるはずだし。これは多分希望が通ると思うぞ。」

「よっしゃ!南極や」

「多分無理だと思う。」

「何でや!」

「ワクチンが普及してある程度自由になる(だろう)のは日本での話であって、世界ではまだどうなっているかわからないからな。だから旅行の計画は是非国内でお願いします。てか国内であれば大概オッケーだと思うぞ。」

「よっしゃ!これから考えてみる!」

「旅行先を考えて親に言うって事は、その分夏休みから勉強を頑張るって事だからな。忘れんなよ!」