「あれ?そういえば弟さんは錦丘中学校を受験したんだっけ?」
「いや、受けてないです。4月からは自分と同じ中学校に通います」
「へ~。ま、いいんじゃない?本人が決めた事なんだから。」
「一緒の中学とか嫌ですよ~。受験して錦丘中に行ってくれればよかったのに」
「だからって別に4月から2人一緒に登校するわけじゃないんでしょ?だったら別に問題なくない?」
「『弟と一緒』っていう響きが既に嫌です」
「じゃあ、どうしようもないな。まぁ、中学受験はメリット・デメリットいろいろあるから、真剣に考えたうえで受験しないことを選んだんだろう。そこは分かってあげなきゃ。」
「『私と同じ中学に通わない!』これだけでも十分メリットでしょ?」
「どんだけ弟が嫌なんだよ(笑)。」
「ところで中学受験のメリットって何ですか?」
「そりゃあ中高一貫教育だろうね。よっぽどの問題を起こさない限り高校卒業まで約束されるわけだから、大学受験から逆算してスケジュールを立てることが出来る。将来の目標や学びたい分野、行きたい大学が決まっている人とかにはお勧めだね。」(国立の附属中学校は中学3年生の終わりに選抜試験があるので、入学=6年間保証ではないです)
「うちの弟、そんな将来の目標なんか聞いたことないけど」
「そう、逆に目標がないまま入学すると強烈なデメリットが発動することもある。それは中学受験がゴールだと勘違いして入学してから勉強しなくなるパターンだ。中高一貫教育は逆に言えば高校入試がない。だから中学3年生のみんなが頑張るタイミングで受験モードに入らない。そのため高校から入学してきた生徒と中学から通っている生徒で結構な実力差がついてしまっていることも多いんだ。」
「でも、かわりに中学入学前に受験勉強してますよね?」
「中学入試と高校入試は同じじゃない。出題範囲も問題の難しさも自分自身の勉強する能力も違う。中学の3年間はみんな劇的に成長するんだよ。あんまり自覚ないかもだけど。だからそこで必死に受験勉強を頑張った生徒と、のほほんと過ごしていた生徒ではそりゃ実力差はつくでしょ?」
「あっ・・・」
「だから必ずしも中高一貫校に入学すればいいってものでもない。本気で錦丘に入りたいなら中学校でしっかり勉強して高校から入ればいい。先生の個人的な意見としては、将来のビジョンが見えていないなら無理して中学受験する必要はないかな。石川県にいるのならね。」
「石川県にいるなら?」
「石川県では公立高校が本命で私立高校が滑り止めって認識してる子が多いけど、他の県、特に都市部では私立高校が本命で公立高校が滑り止めってパターンも多いんだ。そういう私立の中高一貫校や小中高一貫校なんかは他とは違う個性のある授業があったりする。そのような選択肢がいくつもある地域に住んでいるのならば、興味のある学校を中学受験してみる価値はあると思う。でも石川県だと学生の数も学校の数も限られているからね。それだけ選択肢も狭いわけだし無理する必要はないのかなと。」
「なるほど」
「まぁ、4月になったら弟と仲良く学校に行ったらいいよ。」
「絶対に嫌!」
「わかったわかった。まぁ、仲良くな。」