「6月くらいから話には聞いていたけどさ~」

「どうしたんですか?急に」

「金沢市は本気で夏休み短縮しないんだな。」

「いいじゃないですか。今年の夏は暑いって聞いてますし。ほっかほかの学校で勉強したって効率が上がらないですよ。」

「いや、もちろんそうなんだけど、それ以上に金沢市内の小学校の半数と全中学校でエアコン設置未完了ってどうよ?近所の中学校では一部の教室にしかエアコンがないっていうのは聞いていたけれど、市内全滅とは。やる気がないにも程があるだろ、教育委員会!」

「でも、仮に学校にエアコンが入って環境が良くなっても、学校との往復がしんどいから、やっぱり家でやるほうがいいです。」

「普段の年ならそれで全っ然問題ないけどな。というか、夏休みの登校日ほど無駄なものってないよな。」

「そうですね。自分は行ったりいかなかったりです。」

「一年に一度この時期に、戦争について考えてみることは大事だと思う。でも、それを学校に行ってまでやる必要はないな。これこそ『オンライン形式』でやればいいじゃん!っと話が少しそれてしまった。今年は違うって話だった!」

「せんせ~、落ち着いてください!」

「6月後半以降、暑さと湿気でコロナウイルスの活動が弱まるという期待もあって緊急事態宣言を解除したわけだが、再びじわじわと感染者が増え始めている。この調子だと国内感染者が完全に収束しないまま初冬の流行期を迎えてしまうだろう。ワクチンが間に合わなかったため、冬の流行が始まれば再び学校を休校しなくてはならない時が来るはずだ。」

「まぁ、そうなりますよねぇ」

「ただでさえ授業が遅れていて、冬にはさらに授業時間が削られることが濃厚なのに何を余裕こいてるんだ!今年に限ってはたとえ猛暑でエアコンなしだったとしてもコロナ的には『まだマシ』な今の時期に補習授業をしないと後半本当に詰んでしまう!」

「たとえ厳しい環境でもですか?」

「そうだ。これが県内のほかの市町村も同じ状況ならまぁギリギリ我慢できるかもしれないけど、こんな呑気なこと言っているの金沢市だけだからな。短いところでは夏休みは10日くらいになるらしい。石川県は学区が廃止されたから県内のどの高校でも受験ができる。それなのに住んでいる地域によって片方は夏休み40日、もう片方は夏休み10日だぞ。この30日の差はどう頑張っても埋められない。これでは成績的にかなりの地域差が出てしまうだろう。」

「やっぱり、自分たち(金沢市内の中学生)が不利になるんですよね」

「ああ、間違いなく。もちろん金沢市も夏休みに補習授業はするだろうけれど、それでも多くて10日前後だろう。たとえ10日頑張ったとしても残り20日の差はやはり大きい。」

「どうなるんですか?」

「まだ、夏休みの予定は確定ではないはずだから、校長先生が学校ごとに判断するのか、金沢市と話し合うのかはわからないけれど。少なくともこのままじゃ完全にアウトだ。」

「どれくらいアウトですか?」

「野球でいえばランナーが3塁をまわった時、既にキャッチャーがボールを持って待っているくらいアウトだな。」

「そんなの完全にアウトじゃないですか!」

「だからこのままじゃそれくらいやばいんだって!」

「どうすればいいんですか?」

「このままの方針が変わらないならば、夏休みは週5日は塾だな。今までの復習をしつつ、他の市町村では授業として習っていることを同じタイミングで塾でもやらないといけないからな。さっきも言ったけど何もしないまま9月を迎えたら、この30日の差は残り半年では絶対に埋まらない。だから学校の代わりに塾がその役割を果たすしかない。自主学習にも限界があるしな。」

「わかりました。」